最近、巷でよく聞くようになった「マイクロ法人」。
橘玲さんの書籍「新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ (幻冬舎文庫)」で紹介された「マイクロ法人」ですが、税理士業界では古くから活用されていました。

有名YouTuberであるリベ大の両学長が紹介したこちらの動画で知った方も多いかもしれませんね。
素晴らしい動画解説なので、見ていない方は一度見てみてくださいね。


本記事では、マイクロ法人導入の検討にあたって必要な情報を、多くのマイクロ法人導入経験を有する税理士事務所の目線で網羅的に解説いたします。

マイクロ法人とは?

「マイクロ=小さな」という意味ですので、小さな法人という意味ですが、税務的にはマイクロ法人を利用して節税するスキームを指します。
それでは、まず、なぜマイクロ法人が節税できるのか解説していきたいと思います。

マイクロ法人はなぜ節税できるの?

マイクロ法人は税金と社会保険料を削減できる

マイクロ法人で節税できるのは税金と社会保険料です。

社会保険料を節税するというのは違和感があるかもしれませんが、社会保険料も法律に基づき強制徴収されるので、一種の税であると言えます。
実際のところ、毎年、税制改正は話題に上がりますが、社会保険料のアップが話題に上がることは少ないので、社会保険料が上昇していることを知っている人は意外と少ないものです。
実は、社会保険料は2004年から2021年の約17年の間に約23%から約30%へと7%も上昇しているんです。

所得税は累進課税といって、所得が少ない人の負担率が低く、所得が多い人の負担率が高い制度となっています。
一方、社会保険料は一定の率ですが、上限額があるため、所得が少ない人の負担が大きい制度となっています。(上限額を超えると、それ以上に社会保険料は増えないので、上限額に達した人は収入が増えれば増えるほど社会保険料の負担率は低くなっていきます。)

全年齢の平均給与は約30万円ですので、ほとんどの人は所得税や住民税などの税金よりも社会保険料を多く支払っています。
このため、マイクロ法人を活用して負担の多い社会保険料を削減ができると、数10万円から多い人は100万円を超える資金を毎年残すことができることになるというわけです。

所得分散効果で所得税・住民税が減少

マイクロ法人スキームを導入すると、個人事業主の収入と、マイクロ法人の役員報酬の2本の収入を得ることになります。
個人事業主の収入を事業所得、マイクロ法人の役員報酬を給与所得といいます。
事業所得、給与所得はそれぞれ下記の算式で計算されます。

  • 事業所得=売上ー経費
  • 給与所得=給与収入ー給与所得控除(最低55万円)

ここでのポイントは給与所得控除の最低額が55万円であることです。
つまり、最低でも55万円控除できるので、給与収入が55万円以下であれば、給与所得は0円になるとうことになります。

たとえば、事業所得555万の方が、マイクロ法人スキームを導入して、事業の売上を55万円マイクロ法人に移し、さらに給与を55万円に設定した場合を考えてみましょう。

 導入前導入後
事業所得555万円500万円=555-売上移転55
給与所得0円=給与55-給与所得控除55
マイクロ法人0円=売上55-給与55
合計555万円500万円

そうすると、事業所得は555万円-55万円で500万円です。
マイクロ法人は、売上55万円-給与55万円で利益は0円です。なので、法人の利益に対する税金は発生しません。
さらに、給与所得も給与収入55万円-給与所得控除55万円で0円となるため、所得税・住民税も発生しません。

つまり、事業所得が555万円から500万円に減少し、法人の利益に対する税金と、給与に対する税金はかからないことになります。
これが所得分散効果の仕組みとなります。

ただし、法人については利益の有無にかかわらず発生する税金が最低年間7万円がありますので、減少した所得税・住民税と、この7万円との差額が実際の節税額となってきます。

社会保険制度の違いを活用して社会保険料を削減

社会保険は、年金支給の原資である「年金保険」と、病院等にかかった場合の「医療保険」とで構成されていますが、個人事業主が加入する保険制度と、会社員が加入する保険制度は異なります。
個人事業主が加入する保険制度が「国民年金」「国民健康保険」、会社員が加入する保険制度が「厚生年金」「健康保険」です。

「国民年金」が1階部分、「厚生年金」が2階部分と聞いたことがある方も多いかと思いますが、「厚生年金」に加入すると、国民年金にも加入していることになり「国民年金+厚生年金」となるので、将来受領できる年金は増加します。

年金保険の保険料は、「国民年金」は定額、「厚生年金」は給与×料率で計算されます。
一方、医療保険の方はどうかというと、個人事業主が加入する「国民健康保険」は所得×料率、会社員が加入する「健康保険」は、「厚生年金」と同じく給与×料率で計算されます。

個人事業主

「国民年金」・・・・・定額 
「国民健康保険」・・・所得×料率

マイクロ法人

「厚生年金」・・・給与×料率
「健康保険」・・・給与×料率


ここでのポイントは、会社員が加入する「健康保険」「厚生年金」が給与×料率で計算される点です。

マイクロ法人の給与は、すなわち代表者であるあなたの役員報酬なので自由に金額を決定できますよね。
なので、マイクロ法人を設立して役員報酬を低く設定すると、社会保険料を少なく抑えることができることになります。

一方、個人事業単体の場合、「国民年金」は定額ですが「国民健康保険」は所得×料率なので、所得が増えれば増えるほど国民健康保険料が多くなってしまいます。
つまり、所得が一定以上ある場合は、マイクロ法人で社会保険に加入することで、社会保険料を抑えることができることになります。

マイクロ法人は株式会社と合同会社どちらがよいのか?

マイクロ法人は、小さく(マイクロ)運用する法人という通称ですので、マイクロ法人という法律上の会社形態があるわけではありません。
ですので、マイクロ法人スキームの導入にあたってはどの法人形態をするかを選択する必要があります。

現在の会社法で設立できる会社の種類は「株式会社」、「合同会社」、「合資会社」、「合名会社」の4種類です。
「合資会社」、「合名会社」とうい会社形態も選択できますが、出資者の責任が無限責任となってしまうので、現実的な選択肢としては「株式会社」か「合同会社」となります。
ちなみに、無限責任というのは会社が負った債務を無限に負う、反対に有限責任は出資額を限度として負う、という意味になります。
それでは、「株式会社」と「合同会社」のどちらが良いのかというところですが、基本的には「合同会社」でよいと考えています。

 合同会社株式会社
定款の作成
定款の認証×
設立登記
最低資本金1円1円
出資者の人数1人以上1人以上
出資者の名称社員株主
出資者の責任有限責任有限責任
代表者代表社員代表取締役
取締役の人数全社員1人以上
取締役の任期なし2年~10年
取締役会の設置×任意
監査役の人数×任意
監査役の任期なし4年~10年
決算公告×必要
持ち分の譲渡社員の承認が必要自由だが制限を設けることも可能
定款変更の方法全社員の同意株主総会で2/3以上の同意
業務執行すべての社員取締役会

「合同会社」は、「株式会社」の簡易版として存在していた「有限会社」に代わるものとして作られた会社形態となります。
なので、「株式会社」に比べて簡易的な仕組みとなっています。
具体的には、役員の任期がなかったり、決算公告をする必要がありません。
また、設立に係る費用も抑えられるので、マイクロ法人には最適な法人形態といえます。

マイクロ法人に向いている人、向いていない人

マイクロ法人に向いている人

フリーランスはもちろんのこと、ほとんどの個人事業主はマイクロ法人に向いている人と言えます。
もっと言うと、ほとんどの1人会社や、売上高が1億円に満たない中小会社はマイクロ法人を利用した方が節税できる可能性が高いといえます。
実際、法人化による節税効果を声高に法人化を進める税理士が多いですが、

  • 税金だけを考慮して社会保険料を考慮していない
  • 節税策の導入ハードルが高く、結局導入未済
  • 節税策を導入したものの、面倒な割に大した節税となっていない
  • 法人の方が税理士報酬が一般的に高いので法人化誘導をしている

などのケースがほとんどなので、小さな会社であればマイクロ法人の方が税金的に有利なケースが多いのが実情です。

マイクロ法人に向いてない人

マイクロ法人に向いていない人は、上場企業を目指す方やファンドなどからの資金調達を検討している方です。
上場するためには、株式会社である必要がありますので、「事業をどんどん大きくして人員もどんどん増やして。」という方は、個人事業併用でなく100%法人で事業に集中した方がよいでしょう。

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マイクロ法人の10個のメリット

社会保険料を削減できる

マイクロ法人を活用すると社会保険料を削減することができます。

マイクロ法人を設立したら、代表者は必ず法人の社会保険に入らなければなりません。
そして、法人の社会保険に加入すると、個人事業の「国民年金」と「国民健康保険」は脱退することになります。

個人事業の社会保険は、所得の多寡にかかわらず定額の「国民年金」と、所得に比例する「国民健康保険」の2つです。

一方、法人の社会保険は、「厚生年金」と「健康保険」ですが、いずれも給与に比例します。
マイクロ法人の社長は自分ですので、給与額を自由に決めることが可能です。
この給与額を低く抑えれば社会保険料も低く抑えることができます。

個人事業の場合は、「国民健康保険」が所得比例のため、所得が多くなると国民健康保険料が多額となってしまいますが、マイクロ法人では、自分で給与額を決定できるので、所得が多い場合には社会保険料を削減できることになります。

所得税の節税ができる

マイクロ法人では所得税を削減することも可能です。

給与所得は「給与-給与所得控除」で計算されます。
そして、給与所得控除は最低55万円と決められています。
つまり、給与が55万円以下であれば、給与所得は0円となり、所得税の課税はありません。

ですので、マイクロ法人を活用して、個人事業の売上を55万円法人に移し、法人で給与を55万円支払うと、個人事業の所得を55万円圧縮することが可能です。

ただし、同一事業の同質の売上を節税だけを目的に法人に移してしまうと、税務署に否認される可能性があるので注意が必要です。

消費税が節税できる

マイクロ法人では消費税の節税も可能性です。

消費税は、原則的に2年前の売上高が1千万円を超えている場合に納税義務が発生します。
このため、2年前の売上高が1千万円以下の事業者であれば、消費税を受領している場合にも、消費税を納める必要がありません。

設立から2年間は、2年前の売上高がありませんので、原則的には免税事業者となります。
また、2年を超えた場合にも、マイクロ法人の売上高は通常は1千万円を超えませんので、免税事業者となります。

ですので、個人事業者が課税事業者の場合で、マイクロ法人に売上を移すことができると、移した売上に関しては消費税を納めなくてよいこととなります。

ただし、こちらについても、所得税の節税と同様に、同一事業の同質の売上を節税だけを目的に法人に移してしまうと、税務署に否認される可能性があるので注意が必要です。

経費化できる範囲が広い

法人は個人と比較すると経費に計上できる範囲が広いです。
代表的なものとしては、下記のようなものがあります。
・生命保険、医療保険
・社宅家賃
・出張手当
・自動車

生命保険、医療保険

個人で民間の生命保険に入った場合、生命保険料控除が使えますが、生命保険料控除は最大12万円です。

個人の生命保険料控除は上限がありますが、法人で生命保険に入れば上限はありません。
生命保険の内容に応じて、全額損金、半分損金など費用に計上できる割合は異なりますが、しっかり検討すれば個人で生命保険に入るよりも経費計上額を増やすことができる可能性があります。

社宅家賃

自宅を事務所として使う場合、事務所利用分は経費に計上することができます。
例えば家賃15万円の賃貸を借りて、そのうち3分の1を事務所として使っていれば5万円を経費に計上できます。

自宅を賃貸して、一部を事務所として使う場合は、このような形で利用分を経費計上できるわけですが、法人が賃貸した物件を、役員に社宅として貸すという形をとると経費計上割合が増加します。
役員社宅の場合は、通常は家賃の20%程度を役員から徴収すればよい計算になりますので、家賃の80%の経費計上が可能となります。
家賃15万円とすると、80%の12万円が経費計上できることとなります。

つまり、自分で賃貸&一部事務所利用と比べると、7万円(12万円-5万円)経費計上額を増やすことができます。
年間ベースでは、役員社宅にすることにより84万円(7万円×12か月)経費計上額を増やせるということになるわけです。

出張手当

個人事業では認められていないが、法人に認められているものとして出張手当があります。

基本的に、会社が支給する金品は〇〇手当等の名義を問わず、給与として課税されてしまうのですが、この出張手当に関しては、給与課税がされません。

ただし、出張手当を支給する場合は、出張規程を作って出張報告書などを整備する必要があります。
また、出張手当の相場がありますので、著しく高い出張手当は給与として課税される可能性があるので注意が必要です。

自動車

個人所有の自動車でも事業に利用した場合は、事業利用分を費用に計上可能です。

自動車の減価償却費のほか、ガソリン代や自動車保険なども事業利用割合に応じて経費に計上できます。
ただ、自動車を法人名義で購入すれば、経費計上額を増加することができる可能性があります。

例えば、一年間に一度も自動車に乗らなかった場合、個人所有の場合は事業利用分がありませんので経費計上額は0円ですが、法人名義の場合、そもそも法人の持ち物なので、減価償却費、自動車保険は全額経費計上できることとなります。

法人名義でもプライベート利用分は、経費とはなりませんが、法人名義の場合、「原則全額経費-プライベート利用分」となるので、個人事業の「個人負担額のうち事業利用分を経費計上」に比べると経費に計上できる部分が増加しやすい傾向となります。

欠損金の繰越期間が長い

個人事業も、法人も青色申告を行うと「繰越欠損金の繰越控除」という特典を利用できます。
「繰越欠損金の繰越控除」というのは、当期に発生した損失を将来に繰り越して、将来発生する利益と相殺できる制度です。
この制度を使うか使わないかで、全体の税金支払い額は大きく変わってきます。

個人事業も法人も、青色申告を行えばこの制度を使えるのですが、欠損金の繰越期間が個人事業と法人で異なります。

個人事業の欠損金の繰越期間が3年なのに対し、法人では10年繰越すことができます。

代表取締役社長になれる

マイクロ法人は法人ですので、マイクロ法人を作ると代表取締役という肩書(合同会社の場合は代表社員)を得ることができます。
個人事業主よりも法人の代表の方が、事業の信頼性が高いので、見せ方を工夫することで営業活動を有利に進めることが可能です。

会計管理がしっかりできる

個人事業に比べると法人の決算書類は複雑です。
複雑な分、会計管理がしっかりなされた書類となっています。
それでも、マイクロ法人の決算書類は、一般的な法人の決算書類と比べるとシンプルになりますので、将来的な法人化に向けたステップアップとしても活用できます。

取引先などから信頼が得られる

個人事業主との取引はNGという会社は結構あるものです。
そうすると、間に指定された会社を挟まなければならなかったりして、一部利益が吸い上げられてしまったりします。
メインは個人事業の場合にも、得意先に応じてマイクロ法人契約とすることで、ビジネスのチャンスをつぶすことなく事業展開ができます。
また、BtoCの不特定多数の消費者向けのビジネスなどでも、法人の方が信頼度が高くとらえられる傾向があります。

融資や資金調達が受けやすい

個人事業でも法人でも、融資を受けることは可能です。
ただし、決算書類が充実している法人の方が、融資を受けるには適しています。
なので、多額の融資を行いながら事業展開を考える場合には法人の方が適していることとなります。
また、ファンドなどから資金調達を受けるためには、法人でなければ難しいと言えます。

法人経営を学べる

マイクロ法人といえども、法人です。
このため、ソニーやトヨタといった超大企業と、企業の大小はありますが同じです。

マイクロ法人は、通常の法人と比べシンプルに運営していきますので、法人経営の骨子をつかむのに適しています。
将来的に事業を大きくしていく場合は、法人化が避けて通れないことになりますが、その際に法人経営の骨子をつかんでいることが活きてきます。

特に、マイクロ法人は、個人事業と法人制度の仕組みを活用した高度なファイナンス施策になるので、個人のファイナンス力の向上に寄与する方法になります。

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マイクロ法人の6個のデメリット

銀行口座開設が難しい

最近は、三菱UFJ銀行や三井住友銀行などの大手銀行は法人口座開設に消極的です。
銀行なのに銀行口座開設を拒否するというのが、不思議ではあるのですが、簡単に口座開設を断ったりしてきます。

ですので、当事務所としては、楽天銀行やPayPay銀行などのネット専業銀行の開設をおすすめしています。
これらのネット専業銀行の口座開設は問題なくできます。

税務申告の手間が増える

個人事業と比べると、法人の税務申告は複雑です。

作成書類枚数も個人事業の場合は10枚以内に収まるのが通常ですが、法人の税務申告書は少なくとも20枚以上になるイメージです。

所得税の申告書は、手引きを確認して必要な部分を埋めていくと計算できるのですが、
法人税の申告書は、別表一~別表十六のうち、必要な資料を自分で判断して取り込まなければならず、法人税の勉強をしたことがないと正確に計算することがまず不可能なつくりになっています。

なので、マイクロ法人を作る場合には、税理士に依頼するのが通常となってきます。

事務手続きが増える

法人は個人事業に比べて、事務手続きも多くなってきます。

法人を作ると社会保険に入る必要がありますので、最初の加入手続きのほか、毎年、「算定基礎届」という書類を年金事務所に提出する必要があります。

また、1人で個人事業を行っている場合は、源泉所得税を支払う必要がありませんが、法人の場合は1人の法人でも源泉所得税を支払う必要があります。

さらに、法人の代表者は、役員報酬を受領するので、年末に年末調整を行う必要が出てきます。

税理士を利用する必要がある

このように、税務申告が複雑になるのと、事務手続きも増えてしまうので、マイクロ法人を作る場合には税理士を利用するのが通常です。

税理士を利用した場合にも、マイクロ法人スキームによる節税効果で、税理士報酬より節税額が大きくなるケースは多いです。

特に、当事務所では、月額5千円~の格安報酬設定とすることで、この資金増加メリットを最大限得ていただくことをコンセプトに税務顧問をしておりますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。

赤字でも税金が発生する

マイクロ法人を設立すると、赤字黒字にかかわらず発生する住民税均等割が年間7万円発生します。

個人事業の場合は、赤字の場合に税金は発生しないので、ここはデメリットとなります。

ですので、マイクロ法人スキーム導入にあたっては、この住民税均等割7万円を考慮して損得のシミュレーションを行う必要があります。

設立費用がかかる

マイクロ法人を設立するためには、法務局への設立登記が必要ですので、自分で登記手続きを行っても登録免許税などの行政手数料の支払いが発生します。

この行政手数料ですが、株式会社を設立するのか合同会社を設立するのかで金額が異なります。
株式会社の場合は、最低約21万円、合同会社の場合は、最低約7万円がかかってきます。

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マイクロ法人の作り方・設立の仕方

マイクロ会社の発起人や本店の所在地を決定する

まずは、マイクロ法人の発起人と本店の所在地を決定しましょう。

発起人とは、会社設立の際、資本金の出資、定款の作成など会社設立の手続きを行う人のことを言います。会社設立時の株主となる人です。
マイクロ法人であれば、株主と法人の代表者(株式会社の代表取締役、合同会社の場合は代表社員と言います。)が同一となるのが通常です。

また、本店の所在地は、自宅で問題ありませんので、特に事務所等を借りる必要はありません。

マイクロ法人の機関設計は簡単

次にマイクロ法人の機関設計を決めます。

機関設計とは、取締役会を設置するかしないか、監査役を置くか置かないかといったことになります。
マイクロ法人は、シンプルな会社ですので、基本的には取締役会や監査役を置く必要はないでしょう。

マイクロ法人の事業目的の決定、商号のチェック

そして、マイクロ法人の目的を決めます。

目的とは、事業の内容になります。
目的は、定款の記載事項で、独特な言い回しで書きますので、こちらのサイトで該当するものを検討しましょう。

会社定款目的記載事例データベースE-目的ドットコム

続いて、会社の名前である商号を決めます。
以前は、同一市区町村に同一の商号の会社設立を禁止する類似商号規制がありましたが、現在は同一所在地でなければ類似商号も認められています。

国税庁の法人番号公表サイトでチェックできますので、法人名が決まったら一度チェックしてみましょう。

マイクロ法人や代表の印鑑作成、個人の実印登録

法人を設立するためには法人印の登録が必要です。このため、登録するための印鑑を作らなければなりません。

法人代表印、銀行印、角印の3点セットが一般的ですが、銀行印を使用することはマイクロ法人の場合、ほとんどありませんので法人代表印と角印の2点セットでよいかと思います。
法人代表印もほとんど使いませんので、銀行印が必要な場合には法人代表印を兼用すれべよいでしょう。

また、代表者の実印も法人設立にあたって必要ですので、実印登録をしていない人は登録を行うようにしましょう。

定款の作成と定款の認証

会社の目的、商号など一式決まったら、定款の作成です。定款とは、会社の目的や商号、事業年度などルール一式を記載した書類で会社の憲法のようなものです。

インターネットを探せばひな型等があるかと思いますが、マネーフォワードクラウド会社設立を使えば、簡単に作成することができます。

定款が作成出来たら、今度はこの定款を公証役場で認証してもらいます。

なお、定款認証は、株式会社の場合に必要となります。
合同会社は定款認証が不要なため、定款認証料5万円が節約できます。

金融機関に対する手続きと資本金の払い込み

定款の作成が完了したら、決定した資本金(出資金)の払込を行います。

法人設立前のため、法人の銀行口座はありませんので、代表者の個人口座に資本金(出資金)を振り込む形となります。

払込の記録が必要となりますので、預金残高が資本金(出資金)以上あるだけではだめです。
預金残高が資本金(出資金)以上ある場合にも、一度引き出して、同額を振り込み払込の記録を作る必要があります。

なお、以前は法人を作るためには最低300万円以上の資本金が必要でしたが、現在は最低資本金の制限はなくなっています。ですので、1円でも大丈夫です。

マイクロ法人利用であれば、いくらでもよいというのが本音ではありますが、いくらでもよいと言われると迷いますよね。
当事務所実績ですが、1万円で作った法人も、10万円で作った法人も、100万円で作った法人もあります。

マイクロ法人の設立登記

定款の作成・認証、そして資本金の払い込みまで完了したら必要書類を揃えて法務局に設立登記を行います。
書類等に不備がなければ、おおよそ1週間くらいで法人設立となります。

なお、書類等の不備がある場合には、さらに時間がかかってしまうケースもありますが、法人設立日はあくまで登記申請を行った日となります。

法人は、一生に何回も作るものではないので、「大安」の日や語呂が良い日などお好きな設立希望日で登記申請を行ってください。

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マイクロ法人を設立したらやること

マイクロ法人の銀行口座を開設しよう

マイクロ法人を設立したら、法人の銀行口座を開設しましょう。

おすすめは楽天銀行やPayPay銀行などのネット専業銀行です。手数料が安いのと、利便性にも優れています。

マイクロ法人は、取引が限られているので、毎月会計処理を行うというよりは、1年間まとめて会計処理を行うのが一般的です。

三菱UFJ銀行や三井住友銀行などは、ネットバンキングで参照できる期間が短いので通帳記帳に店舗までいかなければならないなど手間が増えてしまいます。

税務に関する届出を出そう

マイクロ法人を設立したら税務に関する届出を出しましょう。
届出の中には、期限があるものもありますので、忘れずに期限まで出すようにしましょう。

法人設立届出書

法人設立届出書は、所轄の税務署、都道府県税事務所、市区町村役所の3か所に提出します。

青色申告の承認申請書

青色申告の承認申請書は、所轄の税務署に提出します。

設立事業年度から青色申告の特典を利用するためには、設立の日から3か月以内に提出する必要があります。
忘れずに提出するようにしましょう。

給与支払事務所等の開設届出書

給与支払事務所等の開設届出書は、所轄の税務署に提出します。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、所轄の税務署に提出します。

この申請書を提出すると、給与などの源泉所得税の納付が年2回で済むようになります。
提出していないと、毎月、源泉所得税の納付を行わなければならないので必ず提出するようにしましょう。

なお、源泉所得税の納期の特例は従業員10名未満の事業所限定の特例になります。

社会保険の加入手続きをしよう

健康保険・厚生年金保険の加入手続きは以下の手順で行います。

  • 年金事務所に届け出る「必要書類」を準備
  • 設立登記完了後5日以内に管轄の年金事務所に提出

まずは年金事務所に届け出る必要書類を準備する必要があります。 それぞれの書類は日本年金機構のホームページからダウンロードできます。

年金事務所に届け出る「必要書類」を準備

社会保険加入手続き時に準備する書類は以下の通りです。

  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届

それぞれの書類は日本年金機構の健康保険・厚生年金保険適用関係届書・申請書一覧からダウンロード可能です。

健康保険・厚生年金保険新規適用届

事業所の設立登記完了後5日以内に提出しなければならない書類です。
また、以下の場合に応じて添付書類が必要となります。

1.法人事務所の場合
 法人(商業)登記簿謄本

2.事業主が国、地方公共団体又は法人である場合
 法人番号指定通知書のコピー

3.強制適用となる個人事業所の場合
 事業主の世帯全員の住民票(コピー不可)

なお、法人(商業)登記簿謄本、および住民票(コピー不可)は、直近の状態を把握するため、提出日から遡って90日以内に発行されたものである必要があります。

健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

従業員を採用した場合に提出が必要な書類で、新たに社会保険加入手続きが必要な従業員が出た場合、事実発生から5日以内に提出しなければなりません。

健康保険被扶養者(異動)届

新たに社会保険加入手続きを行った従業員に扶養家族がいる場合に提出する書類です。
また、以下の書類を必ず添付する必要があります。

  • 被扶養者の戸籍謄本または戸籍抄本
  • 住民票の写し(コピー不可・個人番号の記載のないもの)
  • 収入要件確認のための書類
  • 「被扶養者の戸籍謄本または戸籍抄本」と「住民票の写し」はいずれか1つを提出する必要があります。

設立登記完了後5日以内に管轄の年金事務所に提出

揃えた必要書類は、設立登記完了後5日以内に管轄の年金事務所に提出しましょう。
会社所在地の地域を管轄している年金事務所を検索する場合は、日本年金機構「全国の相談・手続き窓口」からアクセスしてください。

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マイクロ法人運営の注意点

法人から受け取る給与は最低限に

マイクロ法人の節税メリットを最大限受けるためには社会保険料を最低限に抑える必要があります。

社会保険料は、東京都の場合月額63,000円未満であれば、最低限の金額となります。
切りの良い金額として、6万円が一つの候補ではありますが、6万円とすると給与所得が少し発生してしまいます。

給与収入6万円×12か月-給与所得控除55万円=17万円

なので、給与所得控除内に収まる4.5万円がおすすめとなります。
給与所得控除55万円÷12か月=4.58万円 → 切り良く4.5万円

マイクロ法人に売上を移しすぎないこと

マイクロ法人に移した売上を、個人の収入として自由に使えるようにするためには、基本的には同額の役員報酬を設定する必要があります。

【イメージ】
マイクロ法人売上60万円 → 役員報酬60万円
マイクロ法人売上500万円 → 役員報酬500万円

上記のように、役員報酬を500万円としてしまうと、それに応じて社会保険料が増えてしまい、社会保険料の削減メリットがなくなってしまいます。
ですので、役員報酬を低額に抑えられる範囲内で売上移転を検討する必要があります。

個人事業主と法人で違う事業をすること

基本的に、個人事業と法人では違う事業を行うようにしましょう。

同一事業で自由に、個人事業の売上としたり法人の売上としたりしてしまうと、不当な利益調整として否認されてしまう可能性があります。

<具体例>

個人:税理士業、法人:コンサル業
個人:SE業、法人:物販業

プライバシーに注意

法人登記を行うと、本店所在地と代表者の氏名・住所が登記簿謄本に記載されます。
登記簿謄本は、会社名・住所等を指定して取得するものなので、取得した人にしか公開されませんが、だれでも取得が可能です。
自宅で登記する場合などは、問題がないかどうか検討するようにしましょう。
問題がある場合には、登記OKのバーチャルオフィスなどの利用を検討しましょう。

シミュレーションは会社負担の社会保険料を忘れずに

個人事業の場合、社会保険料は自分のものだけですが、マイクロ法人の場合は、自己負担分と会社負担分の2つがあります。
サラリーマンとして働く場合は、自己負担分だけを考慮すればよいですが、オーナー兼代表者となるので、「自己負担分+会社負担分」が実際の負担額となります。
会社負担分の社会保険料を忘れないでシミュレーションするようにしましょう。

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マイクロ法人節税額のシミュレーション

マイクロ法人スキームで実際、どのくらい節税できるのかを具体例をもとに見てみましょう。

下記の状況での具体例をご紹介したいと思います。

  • 本人年齢40歳
  • 配偶者専業主婦、子供2名
  • 事業所得500万円
  • 消費税の課税事業者
 導入前導入後削減額
税金89万円42万円▲47万円
社会保険112万円32万円▲80万円
合計201万円74万円▲127万円

この場合は、マイクロ法人スキームを活用することでなんと年間127万円も節税できることになります。
しかも、導入年度だけでなくて、毎年節税できるのでとても効果が大きいことがわかるかと思います。

事業所得が500万円あれば、税理士を使っても十分にペイすると言えます。
500万円以下の所得でも300万円以上あれば、実質無料で税理士を使うことができるといえます。

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さいごに

本記事では、マイクロ法人の作り方からメリット・デメリット・注意点まで網羅的に解説いたしました。

マイクロ法人スキームは、個人事業主にとって最強の節税対策です。

個人事業主の方は、サラリーマンに比べると不安定な立場となりますので、このスキームを活用して、手元資金を増やし事業運営・資産運用に活用していってほしいと思います。

当事務所では、月額5千円~のマイクロ法人スキーム導入コンサル付きの格安税務顧問をご提案しております。

当サービスでは、まず過年度の実績から、節税効果見込み額を試算させていただいて、効果が出る方に導入提案をしております。

なお、節税効果見込み額の試算は無料で行っていますので、お気軽に申し込みいただければと思います。

また、「自分は導入できるのかな?」など、疑問のある方もお気軽にお問い合わせいただければと思います。

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