2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で様々な助成金や給付金が支給されました。助成金・給付金については種類によって所得税が課税されるものもあれば非課税とされているものもあります。所得税が課税されるものについては、確定申告で収入として計上して確定申告書を作成しなければなりません。
このページでは新型コロナウイルス感染症に直接関連した助成金・給付金のほか、新型コロナウイルス感染症の影響で派生して失業した場合などに受給することとなる助成金・給付金、さらには、新型コロナウイルス感染症に関連して大学生が大学から受給した助成金・給付金や、施設などの従業員が事業主から受給した見舞金の取扱いについてもまとめています。

個人に対する国や地方公共団体の助成金・給付金には税金がかかるのか?

助成金・給付金に税金がかかるのか、かからないのかは、助成金・給付金の種類によって異なってきます。まずは国や地方公共団体から支給された助成金・給付金の課税上の基本的な考え方について理解をしていきましょう。

非課税となる助成金・給付金

次のような助成金・給付金は非課税となります。なお、助成金・給付金には金銭に限らず商品券などの経済的利益も含まれるので注意が必要です。

非課税となる助成金・給付金

①助成金の支給の根拠となる法令等の規定により、非課税所得とされるもの②その助成金が次に該当するなどして、所得税法の規定により、非課税所得とされるもの・学資として支給される金品(所得税法9条1項15号)・心身又は資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金(所得税法9条1項17号)

課税となる助成金・給付金

上記の非課税となるもの以外の助成金・給付金については課税となります。つまり、法律で非課税とされているもの以外は課税です。助成金・給付金は法律に基づいて支給されますので、助成金・給付金の課税関係は個別に判断せざるを得ないということになります。

助成金・給付金は取得理由によって所得区分が異なる

所得税には事業所得や給与所得など所得区分が全部で10区分あります。課税の助成金・給付金については確定申告で収入に計上しなければなりませんが、どの区分に計上すればよいのでしょうか?10区分のうちどの所得区分とするかは、その助成金・給付金がどの所得に関連して支給されたかにより下記のように判断していきます。

①事業所得等に区分されるもの
事業に関連して支給される助成金(例えば、事業者の収入が減少したことに対する補償や支払賃金などの必要経費に算入すべき支出の補てんを目的として支給するものなど)
※補償金の支給額を含めた1年間の収入から経費を差し引いた収支が赤字となる場合などには、税負担は生じません。また、支払賃金などの必要経費を補てんするものは、支出そのものが必要経費になります。

②一時所得に区分されるもの
例えば、事業に関連しない助成金で 臨時的に一定の所得水準以下の方に対して一時に支給される助成金
※一時所得については、所得金額の計算上、50万円の特別控除が適用されることから、他の一時所得とされる金額との合計額が50万円を超えない限り、税金は発生しません。

③雑所得に区分されるもの
上記①・②に該当しない助成金・給付金は雑所得として申告します。

助成金・給付金はいつの確定申告の収入に計上するのか?【計上時期を確認しよう】

助成金・給付金が課税となる場合には、確定申告において収入に計上しなければなりません。それではいつの確定申告の収入に計上するのでしょうか?
年末に申請した助成金・給付金が翌年になって入金された、助成金・給付金の入金はあったが交付目的の固定資産の購入が翌年になってしまったなど各人によって状況は異なってきます。収入時期を誤ってしまうと正しい税金計算になりませんので、ここで正確な収入の計上時期を確認していきましょう。

助成金・給付金の収入計上時期の基本的な考え方

所得税の計算では、ある収入の収入計上時期は、その収入すべき権利が確定した日の属する年分となります(所得税法第36条)。
助成金・給付金については、国や地方公共団体により助成金・給付金の支給が決定された日に、収入すべき権利が確定すると考えられますので、原則として、その助成金・給付金の支給決定がされた日の属する年分の収入金額となります。
ポイントは「支給決定がされた日」ですので、実際に支給を受けたのが令和3年でも令和2年中に支給決定されていれば、令和2年の収入に計上することとなります。

特定の支出を補填するためのものであれば支出が発生した年度に収入を計上してOK【例外①】

上記の通り支給が決定された年に収入を計上するのが基本的な考え方ですが、例外もあります。例えばマスクや消毒液を購入するための補助金をもらったが、購入が翌年になってしまった。このような場合に補助金をもらった年に課税してしまうと補助金の目的のマスクや消毒液が購入できなくなってしまいます。
このような場合に備えて、助成金・給付金が、支給要綱などで定められた特定の支出を補填するものについて、その支給を受けるために必要な手続をしているときには、その支出と同時に、実質的に助成金・給付金を支給する権利が確定していると考えられることから、その収入計上時期は、結果として、所得が生じることがないように、その支出が発生した日の属する年分として取り扱うこととしています(所得税基本通達36・37共-48)。
ですので、医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業の補助金であれば、マスクや消毒液の購入した年、清掃委託費用などを支出した年に収入を計上することができます。

助成金・給付金の交付目的に適合した固定資産の取得をした場合には収入に計上しなくてOK【例外②】

上記のようにマスクや消毒液などの消耗品であれば、消耗品を購入した年に経費が発生するので、消耗品を購入した年に収入を計上することで収入と支出を相殺することができました。それでは、固定資産を購入した場合はどうなるでしょうか?少し専門的になってしまいますが、固定資産は購入した年に購入金額全額が費用になるのではなく、利用年数に応じた分だけが費用となります。このため、固定資産の購入年に収入全額を計上してしまうと、費用より収入が多くなってしまい、差額に対して税金が課されてしまいます。
そこで、助成金・給付金の交付目的に適合した固定資産の取得等をした場合において、一定の要件を満たすときには、その固定資産の取得等に充てた部分の金額に相当する金額を総収入金額に算入しない(総収入金額不算入)こととされています(所得税法42条・43条)。

新型コロナウイルス感染症等の影響に関連して国等から支給される主な助成金・給付金の課税関係(例示)

新型コロナウイルス感染症に直接関連する助成金・給付金の課税関係は以下の通りとなります。

非課税となる新型コロナウイルス関連の助成金・給付金の具体例

希望する国民全員に一律10万円の特別定額給付金が配られましたが、この特別定額給付金は非課税となります。

【支給の根拠となる法律が非課税の根拠となるもの】
・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金(雇用保険臨時特例法7条)・新型コロナウイルス感染症対応休業給付金(雇用保険臨時特例法7条)
【新型コロナ税特法が非課税の根拠となるもの】
・特別定額給付金(新型コロナ税特法4条1号)・子育て世帯への臨時特別給付金(新型コロナ税特法4条2号)
【所得税法が非課税の根拠となるもの】
〇学資として支給される金品(所得税法9条1項15号)・学生支援緊急給付金〇心身又は資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金(所得税法9条1項17号)・低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金・新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金・企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券・東京都のベビーシッター利用支援事業の特例措置における助成

課税となる新型コロナウイルス関連の助成金・給付金の具体例

国民全員に受給権利があった特別定額給付金は非課税でしたが、持続化給付金や雇用調整助成金など事業に関連して事業者が受給した助成金・給付金については課税となります。

助成金等の種類収入計上時期
【事業所得等に区分されるもの】(法人税についても、同様)
・持続化給付金(事業所得者向け)・東京都の感染拡大防止協力金・支給決定時
・雇用調整助成金・小学校休業等対応助成金(支援金)
・家賃支援給付金・小規模事業者持続化補助金・農林漁業者への経営継続補助金・医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業における補助金
・支給決定時又は経費発生時(※1~3)
【一時所得に区分されるもの】
・持続化給付金(給与所得者向け)・支給決定時
・Go To トラベル事業における給付金・旅行終了時(旅行代金割引相当額)
・クーポン使用時(地域共通クーポン相当額)
・Go To イート事業における給付金・ポイント・食事券使用時
・Go To イベント事業における給付金・ポイント・クーポン使用時
【雑所得に区分されるもの】
・持続化給付金(雑所得者向け)・支給決定時

新型コロナに派生して国等から支給される主な助成金・給付金の課税関係(例示)

新型コロナウイルス感染症に直接関連するわけではないが、新型コロナウイルス感染症影響で失業した場合などは失業給付を受給できる場合もあります。このような派生して受給することとなる助成金・給付金の課税関係は以下の通りです。

非課税となる新型コロナウイルスに派生して支給される助成金・給付金の具体例

国等から支給される助成金・給付金で、失業給付や生活保護費など社会のセーフティネットとしての役割を果たす助成金・給付金は非課税となっています。

【支給の根拠となる法律が非課税の根拠となるもの】
・雇用保険の失業等給付(雇用保険法12条)
・生活保護の保護金品(生活保護法57条)
・児童(扶養)手当(児童手当法16条、児童扶養手当法25条)・被災者生活再建支援金(被災者生活再建支援法21条)
【租税特別措置法が非課税の根拠となるもの】
・簡素な給付措置(臨時福祉給付金)(措置法41条の81項1号)・子育て世帯臨時特例給付金(措置法41条の81項2号)・年金生活者等支援臨時福祉給付金(措置法41条の81項3号)
【所得税法が非課税の根拠となるもの】
〇学資として支給される金品(所得税法9条1項15 号)・東京都認証保育所の保育料助成金

課税となる新型コロナウイルスに派生して支給される助成金・給付金の具体例

国等から支給される助成金・給付金も新型コロナ関連の助成金・給付金と同様に、事業に関連して支給される補てん金や地域振興券などは課税となっています。

【事業所得等に区分されるもの】
・肉用牛肥育経営安定特別対策事業による補てん金
【一時所得に区分されるもの】
・すまい給付金・地域振興券
【雑所得に区分されるもの】
・企業主導型ベビーシッター利用者支援事業における割引券(通常時のもの)・東京都のベビーシッター利用支援事業における助成(通常時のもの)

学生に対して大学等から支給された助成金に税金はかかるの?

新型コロナウイルス感染症の影響で、学校生活にも多大な影響が及び大学側でも様々な支援策を学生に行っています。これらの支援策の中には支援金などを学生に支給するものがありますが、これらの支援策には税金がかかるのでしょうか?下記の4パターンについてそれぞれ解説していきます。
①学費を賄うために支給された支援金の課税関係
②生活費を賄うために支給された支援金の課税関係
③感染症に感染した学生に対する見舞金(5万円)の課税関係
④遠隔授業を受けるために供与されたパソコン等の機械の課税関係

①学費を賄うために支給された支援金の課税関係

学費を賄うために支給された支援金は非課税所得となる「学資金」(所得税法9条1項 15 号)に該当します。このため、所得税の課税対象になりません。ただし、「学費を賄うため」と使途が特定されていることが重要です。その支援金の使途が特に限定されていないと認められる場合には、下記②と同様になりますが一時所得として課税対象となります。

②生活費を賄うために支給された支援金の課税関係

生活費を賄うために支給された支援金は、まさに「生活費を賄うため」の支援金ですので「学資金」には該当しません。このため、課税対象となり一時所得として収入金額に計上する必要があります。ただし、一時所得の計算では収入金額から50万円を控除するので、その年の他の一時所得とされる金額との合計額が50万円を超えない限り、所得税は発生しません。

③新型コロナウイルス感染症に感染した学生に対する見舞金の課税関係

新型コロナウイルス感染症に感染した学生に対する見舞金は、非課税所得となる「心身又は資産に加えられた損害について支給を受ける相当の見舞金」(所得税法9条1項 17 号)に該当します。このため、所得税の課税対象になりません 。

④遠隔授業を受けるために供与されたパソコン等の機械の課税関係

非課税所得となる「学資金」(所得税法9条1項15号)には金銭のほかパソコン等の実物資産も含まれます。このため、所得税の課税対象になりません。

従業員に対して事業者から支給された見舞金に税金はかかるのか?

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため休業要請される業種がある一方、福祉施設やインフラサービスなどは社会的要請により休むことが難しい業種もあります。このような業種では、働く従業員に対して一律5万円などの見舞金を支給しているケースも多くあります。それでは、この見舞金に税金はかかるのでしょうか?実は一律に見舞金に税金がかかるかどうかは言えず、見舞金に税金がかかるかどうかはその見舞金が下記3つの条件を満たしているかどうかによることとなります。

非課税となる見舞金の3条件

条件①その見舞金が心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるものであること
条件②その見舞金の支給額が社会通念上相当であること
条件③その見舞金が役務の対価たる性質を有していないこと

条件①その見舞金が心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるものであること

心身に加えられた損害につき支払を受けるものの具体例としては、次のようなものが該当します。

  • 従業員等やその親族が新型コロナウイルス感染症に感染したため支払を受けるもの
  • 緊急事態宣言の下において、事業の継続を求められる事業者の従業員等で次のいずれにも該当する者が支払を受けるもの(注1)

a.多数の者との接触を余儀なくされる業務など新型コロナウイルス感染症の感染リスクの高い業務に従事している者b.緊急事態宣言がされる前と比較して、相当程度心身に負担がかかっていると認められる者(注1)緊急事態宣言がされた時から解除されるまでの間に業務に従事せざるを得なかったことに基因して支払を受けるものに限ります。

条件②その見舞金の支給額が社会通念上相当であること

余りにも高額な見舞金は非課税とはなりません。見舞金の支給額が社会通念上相当であるかどうかは、次の点を踏まえ判断することになります。

  • その見舞金の支給額が、従業員等ごとに新型コロナウイルス感染症に感染する可能性の程度や感染の事実に応じた金額となっており、そのことが事業者の慶弔規程等において明らかにされているかどうか 。
  • その見舞金の支給額が、慶弔規程等や過去の取扱いに照らして相当と認められるものであるかどうか 。

慶弔規定等で合理的な計算がなされている必要がありますので、支給にあたっては慶弔規定を整備しておくことが望ましいです。

条件③その見舞金が役務の対価たる性質を有していないこと

次のような見舞金は「役務の対価たる性質を有していない」という条件を満たさないのので非課税となる見舞金には該当しないことになります。

  • 本来受けるべき給与等の額を減額した上で、それに相当する額を支給するもの
  • 感染の可能性の程度等にかかわらず従業員等に一律に支給するもの
  • 感染の可能性の程度等が同じと認められる従業員等のうち特定の者にのみ支給するもの
  • 支給額が通常の給与等の額の多寡に応じて決定されるもの

この3条件を満たす下記のような見舞金であれば非課税とされる見舞金に該当します。

非課税となる見舞金の具体例

・緊急事態宣言下で事業の継続を求められる事業者が、緊急事態宣言下で働く従業員に対し【条件①クリア】・慶弔金規定に基づき一律5万円を支給【条件②条件③クリア】