生計を一にする親族への支払いは必要経費とならない
個人事業では、生計を一にする親族への支払いは必要経費となりません。
仕事を手伝ってくれた妻や子供に給与を支払っても原則的には必要経費にできないので、所得税の計算ではなかったこととされます。
これは給与に限らず、家賃や車を借りた代金などすべての支払いが該当します。
このため、給与を必要経費とするには一定の方法をとる必要があります。
白色申告の場合は事業専従者控除で所得を控除
白色申告の場合は、給与を必要経費とすることはできません。
ただし、一定の金額を事業専従者控除として収入から控除することが認められています。
事業専従者控除額は次の①と②の金額のどちらか低い金額です。
①配偶者は86万円、配偶者以外は1人当たり50万円
②事業専従者控除適用前の所得金額÷(専従者の数+1)
また、事業専従者は次の要件をすべて満たす人が該当します。
・生計を一にする親族である
・その年12月31日現在で15歳以上である
・その年を通じて6月超専ら白色申告者の事業に従事
青色申告の場合は青色事業専従者給与で給与支給できる
青色申告の場合は、給与を必要経費とすることができます。
ただし、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しなければいけません。
「青色事業専従者給与に関する届出書」には、支給対象者の氏名・続柄・給与支給額などを記載します。
そして、「青色事業専従者給与に関する届出書」は、給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(1月16日以降に新たに事業開始した場合には開始日からの2月以内)に提出する必要があります。
なお、青色事業専従者は次の要件をすべて満たす人が該当します。
・生計を一にする親族である
・その年12月31日現在で15歳以上である
・その年を通じて6月超(転職など一定の場合には従事可能期間の2分の1超の期間)専ら青色申告者の事業に従事
事業専従者を利用する場合の注意点
専ら事業に従事している必要がある
青色事業専従者給与も、白色申告の場合の事業専従者控除も、専ら事業に従事していることが必要です。
ですので、他に仕事をしている家族が空いている時間に手伝いをする場合は該当しないこととなります。
事業専従者は配偶者控除、扶養控除の対象から外れる
青色事業専従者で給与の支給を受けた場合、または、白色申告の場合の事業専従者控除を利用する場合は配偶者控除、扶養控除は利用できなくなります。
事業専従者と配偶者控除、扶養控除はどれが税金的に有利なの?
事業専従者を利用すると配偶者控除、扶養控除が利用できなくなるので、どちらが税金的に有利か不利かを検討する余地が出てきます。
配偶者の場合は、常に配偶者控除より事業専従者が有利
配偶者の場合は、事業専従者控除が86万円なので、配偶者控除の最大額48万円より常に有利となります。
控除を受ける 納税者本人の 合計所得金額 | 一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 (70歳以上) |
---|---|---|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
配偶者以外の場合は、扶養控除が事業専従者より有利な場合がある
扶養控除は基本的には38万円ですが、一定の場合63万円や58万円となります。
配偶者以外の事業専従者控除は50万円なので、どの扶養控除が適用されるかで、事業専従者と扶養控除の有利不利が分かれてきます。
区分 | 扶養控除額 | どちらが有利? | |
---|---|---|---|
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | 事業専従者が有利 | |
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) | 63万円 | 扶養控除が有利 | |
老人扶養親族(70歳以上) | 同居していない | 48万円 | 事業専従者が有利 |
同居している | 58万円 | 扶養控除が有利 |
青色事業専従者と事業専従者はどちらが税金的に有利なの?
青色事業専従者と白色申告の場合の事業専従者では、青色事業専従者が税金的に有利です。
白色申告の場合の事業専従者控除額は、配偶者の場合は86万円、配偶者以外は50万円ですが、青色事業専従者ではあらかじめ決めた金額を設定できます。
給与は99万円までは無税(99万円から住民税が発生)なので、青色事業専従者の給与を99万円に設定すると、白色申告の場合の事業専従者控除額(配偶者86万円、配偶者以外50万円)との差額分、無税の控除額を増やすことができるためです。